弟が「もう治療できません」と言われました。
鼻咽頭がん、ステージ4。まだ二十歳です。
先日、MRI(磁気共鳴)の結果を聞きに、弟と一緒に大学病院の外来へ行きました。
この一年、抗がん剤も放射線も免疫療法も、一通りやれることは全部やってきました。
だからこそ、私は「次はどうするのか」を聞きに行ったつもりでした。
まさか「もう何もありません」と言われるとは、どこかで信じていなかったんだと思います。
担当医にこれまでの経過を説明すると、
「化学療法も放射線も免疫も、すべて試しましたが、効果がありませんでした。正直、私たちにできることはもうありません」
そう、淡々と言われました。
それでも諦めきれず、食い下がりました。
「他に、どこか別の方法はないんでしょうか」
すると先生は、すぐに別の科の先生に電話をかけてくれて、
「こちらのチームで何かできないか、一度相談してみましょう」と言ってくれました。
ただ、その先生の外来はすでに予約でいっぱい。
私たちは予約なしの飛び込みなので、
「予約の患者さんが全員終わるまで、外でお待ちください」
と言われ、延々と廊下のベンチで待つことになりました。
弟は、ほとんど見えない目で床をじっと見て、何も言いません。
私はスマホを見るふりをしながら、心の中でずっと祈っていました。
「どうか、“まだやれることがある”と言ってください」と。
やっと名前を呼ばれたのは、診察時間も終わりかけの頃でした。
診察室に入ると、先生はカルテをさっとめくって、一言。
「…これは、正直もう治療はできませんね」
頭が真っ白になりました。
私はなんとか声を絞り出して聞きました。
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