「同じ8,000円を払ったのに、どうして私だけ機内食がないんですか?」
ファーストクラスの機内で、私がそう尋ねると、近くにいた乗客たちが一斉にこちらを見た。
CAは困ったように微笑みながら答えた。
「申し訳ございません。本日はお食事の数に限りがございまして……」
その言葉を聞いた瞬間、私は静かに息を吐いた。
私は現在、50代の専業主婦。
10年前に仕事を辞め、今ではスーパーの特売品を探すのが日課になっている。
しかし、以前は航空会社でCAとして働いていた。
だからこそ、今の説明に違和感を覚えたのだ。
その日は息子と帰省先から東京へ戻る日だった。
搭乗前、息子がスマホを見ながら言った。
「お母さん、今日ファーストクラスに空きがあるみたいだよ。せっかくだからアップグレードしてみたら?」
「そんな贅沢しなくてもいいわよ」
「いつも家族のために我慢してるんだから、今日は僕に払わせてよ」
結局、息子が8,000円を支払い、私は久しぶりにファーストクラスへ乗ることになった。
ところが、搭乗前のカウンターで、スタッフから思いがけない説明を受けた。
「本日は状況によって、お食事をご提供できない場合がございます」
「食事が出ないこともあるんですか?」
「当日の状況によりますので……」
曖昧な返事だった。
私はもう一度確認しようと思ったが、後ろに並んでいる人もいたため、そのまま搭乗した。
そして離陸後。
CAたちは乗客一人ひとりにメニューを渡し、飲み物や食事の希望を聞いて回っていた。
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