「遅刻は遅刻です。どんな理由でも参加できません」
受付の女性にそう言われ、私は思わず言葉を失った。
手には、駅でもらった遅延証明書。
もう片方には、タクシー代8,660円の領収書があった。
2025年10月26日。
その日は、私にとって絶対に遅れたくない大切な講座の日だった。
何カ月も前から申し込み、仕事の休みも調整してきた。
必要な資料も前日の夜に準備した。
朝は余裕を持って家を出た。
ところが、駅に着いた途端、構内が騒然としていた。
人身事故の影響で電車が遅延していたのだ。
改札前には大勢の人が集まり、ホームも混雑していた。
私はすぐに別の路線を調べた。
駅員にも確認し、少しでも早く到着できる方法を探した。
それでも時間はどんどん過ぎていく。
スマホを見るたび、胸が苦しくなった。
「お願いだから、間に合って……」
私は動いている路線に乗り換え、途中からタクシーを利用した。
料金は決して安くなかった。
最終的に支払った金額は8,660円。
運賃8,100円に通行料560円が加わっていた。
それでも、講座に参加できるなら仕方ないと思った。
ようやく会場に到着したとき、開始時刻から十数分が過ぎていた。
私は息を整える間もなく受付へ向かった。
「申し訳ありません。人身事故で電車が遅れてしまって……」
そう説明し、遅延証明書を差し出した。
さらにタクシーの領収書も見せた。
「途中からタクシーに乗って、できるだけ急いで来ました」
しかし、受付の女性は淡々と言った。
「申し訳ありませんが、開始時間を過ぎていますので参加できません」
「でも、私が遅れたのは交通機関の事故が原因です」
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください