「あなたの掃除が足りないんじゃない?」
同じマンションに住む女性から、まさかこんな言葉が返ってくるとは思わなかった。
私の住むマンションでは、ゴミ出しのルールが決まっている。
ゴミを出していいのは収集日の朝8時まで。
前日の夜に出すことは禁止されている。
ところが、同じ階に住むある住人は、いつも前日の夜にゴミを出していた。
最初は、たまたまなのだと思っていた。
しかし、それが毎週のように続いた。
そして、朝になると決まって悲惨な光景が広がっていた。
カラスがゴミ袋を破り、中身を廊下に散らかしているのだ。
弁当の容器、食べ残し、ペットボトル、紙くず。
ひどいときには、生ゴミまで廊下に転がっていた。
しかも、ゴミ置き場から少し離れた我が家の玄関前にまで散乱している。
朝、仕事に出ようとドアを開けるたびにため息が出た。
結局、毎回私が掃除することになっていた。
最初のうちは黙って片付けていた。
近所付き合いもあるし、わざわざ揉め事を起こしたくなかったからだ。
しかし、何週間も続くと、さすがに我慢できなくなった。
ある日の夕方、ゴミを出しに来た住人に声をかけた。
「あの、少しお願いがあるんですが……」
相手が振り返った。
「前日の夜にゴミを出すと、カラスが荒らしてしまうみたいで。できれば収集日の朝に出していただけませんか?」
できるだけ丁寧に伝えたつもりだった。
ところが、相手は面倒くさそうな顔をして言った。
「それって、あなたの掃除が足りないからじゃない?」
一瞬、耳を疑った。
「え?」
「ちゃんと掃除しておけば、そんなに散らからないでしょ?」
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