新幹線の指定席に座ろうとした瞬間、私は思わず立ち止まった。
「えっ……ここ、私の席なんですけど」
A席の足元には、大きなスーツケースが置かれていた。
その上には分厚い上着。
さらに、座席の背面には黒い買い物袋までぶら下がっている。
どう見ても、隣のC席に座っている男性の荷物だった。
仕事帰りで疲れていた私は、せめて新幹線の中ではゆっくり過ごそうと思い、窓側のA席を予約していた。
ところが、これでは足を伸ばすどころか、まともに座ることさえできない。
私は男性に声をかけた。
「すみません、この荷物を少し移動していただけますか?」
すると男性はスマホから目を離し、面倒くさそうにこちらを見た。
「上の棚がいっぱいなんですよ」
「でも、ここは私の席の足元なので……」
「だから、ちょっと置いてるだけでしょ?」
謝罪どころか、まるで私がわがままを言っているような口ぶりだった。
仕方なく、私はもう一度お願いした。
「スーツケースだけでも、ご自分の席の前に移動していただけませんか?」
すると男性は大きなため息をつき、スーツケースを数センチだけ動かした。
「これでいいですか?」
全然よくない。
私の足元には、まだ荷物が大きくはみ出している。
結局、私は体を斜めにして座るしかなかった。
新幹線が出発しても、男性は何事もなかったようにスマホを見ている。
その一方で、私は膝を動かすたびに荷物にぶつからないよう気を遣っていた。
数千円払って指定席を取ったのに、なぜ自分の席でこんな思いをしなければならないのか。
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