「この子の機嫌を損ねないように、可愛がってあげてください」
東京ディズニーランドホテルに宿泊した私は、出かける前に客室の机に1枚のメモを残した。
実は、今回の旅行には娘が小さい頃から大切にしているぬいぐるみを連れてきていた。
名前は「くまちゃん」。
娘が3歳の誕生日にもらって以来、寝るときも旅行するときも、ずっと一緒だった。
少し汚れているし、毛並みも昔ほどきれいではない。
それでも娘にとっては、何より大切な宝物だった。
今回のディズニー旅行でも、当然のようにスーツケースに入れてきた。
ところが、パークへ出かける朝になって問題が起きた。
「くまちゃんも一緒に行く!」
娘は大きなぬいぐるみを抱きしめて離さなかった。
でも、その日は朝から予定がいっぱいだった。
アトラクションにも乗るし、レストランにも行く。
大きなぬいぐるみをずっと持ち歩くのは難しい。
「今日はお部屋でお留守番してもらおうね」
そう言うと、娘は急に寂しそうな顔になった。
「くまちゃん、1人で寂しくないかな……」
私は笑いながら答えた。
「大丈夫。ホテルの人がいるからね」
そして、ふと思いついた。
客室を整えてくれるキャストさんに、少しお願いしてみよう。
私はメモ用紙を取り出し、こんな言葉を書いた。
「パークには持って行けないので、お部屋に置いて行きますが、機嫌を損ねないように可愛がってあげてください」
少しふざけたお願いだった。
まさか返事があるとは思っていなかった。
娘と一緒に1日中パークを楽しみ、夜遅くにホテルへ戻った。
部屋のドアを開けた娘は、真っ先にベッドへ走った。
「くまちゃん、ただいま!」
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