仕事であまりにも腹が立って、私はローストチキンを丸ごとバッグに入れて職場を出た。
今、自分で書いていても意味が分からない。
でも、そのときの私は本当に限界だった。
しかも、小さなチキンではない。
香ばしく焼き上がった、丸ごと1羽のローストチキンだ。
バッグのファスナーを開けると、こんがり焼けた皮が見える。
内側には油や調味料が付いていて、どう考えても普通の持ち運び方ではなかった。
「何やってるんだろう、私……」
そう思ったのは、職場を出てしばらくしてからだった。
その日は、朝から何もかもうまくいかなかった。
出勤してすぐ、予定していた仕事とは別の作業を頼まれた。
「悪いけど、これ先にお願いできる?」
最初は、いつものことだと思って引き受けた。
忙しい職場では、誰かの仕事を手伝うこともある。
私だって困ったときには助けてもらうのだから、できる範囲で協力したいと思っていた。
ところが、その日は少し様子が違った。
1つの仕事が終わる前に、次の仕事が回ってくる。
ようやく片づけたと思ったら、また別の人から声がかかった。
「これもやってもらえる?」
「すみません、今ちょっと手が離せなくて」
「そんなに時間かからないから」
そう言われると、断りにくい。
私は結局、目の前の作業を中断して対応することにした。
その繰り返しだった。
気づけば、午前中に終わらせる予定だった仕事が、ほとんど進んでいなかった。
「今日、何でこんなに忙しいんだろう……」
思わずため息が出た。
それでも、仕事だから仕方がないと自分に言い聞かせた。
お昼になれば少し休める。
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