「毎晩の話し声で眠れません。これ以上続くようでしたら管理会社へ報告します」
ある朝、玄関のドアを開けた私は、その貼り紙を見て固まった。
白い紙が茶色のテープで丁寧に貼られていた。
しかも、かなり強い警告だった。
「え……うちのこと?」
私は独身で、一人暮らし。
友達を夜中に呼んだこともなければ、彼氏を部屋に招いたこともない。
仕事が終わればコンビニで夕食を買い、シャワーを浴びて寝るだけ。
騒ぐような相手もいない。
それなのに、毎晩の話し声で眠れないと言われても困る。
「人違いじゃないの?」
そう思った私は、少し腹が立った。
しかし、最近の生活を振り返って、あることに気づいた。
実は1か月ほど前から、ある通話アプリで知り合った男性と毎晩話していたのだ。
最初は寝る前の5分だけだった。
「今日もお疲れさま」
「明日は何時に起きるの?」
そんな何気ない会話だった。
彼の声は落ち着いていて、一日の疲れが癒やされるような気がした。
気づけば毎晩の習慣になり、通話をつないだまま眠るようになっていた。
朝起きると、通話時間が5時間を超えていることも珍しくなかった。
でも、私はずっとこう思っていた。
「小声で話しているし、一人なんだから問題ないでしょ」
その日の夜、私はいつものように彼に電話をかけた。
そして玄関に貼られていた紙のことを話した。
すると彼は少し黙ってから、申し訳なさそうに言った。
「実はさ、君って眠くなると結構声が大きくなるんだよね」
「え?私が?」
「うん。急に笑い出したり、同じ質問を何度もしたりするよ」
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