「先生、お願いがあります。お母さんを呼んでください」
小学3年生の女の子が、担任の机に1枚の紙をそっと置いた。
そこには、たどたどしい文字でこう書かれていた。
「おかあさんはからおけにいます」
「まいにちうたがきこえます」
「おやごよんでください」
最初、担任の佐藤先生は意味がよく分からなかった。
しかし、最後の一文を読んだ瞬間、胸に引っかかるものを感じた。
女の子の名前は美咲。
普段は大人しく、授業中もほとんど手を挙げない子だった。
給食も残すことが多く、最近は授業中に眠そうにしていることも増えていた。
先生が優しく尋ねた。
「美咲ちゃん、お母さんは毎日カラオケに行っているの?」
美咲は小さく頷いた。
「うん。夜になるといなくなるの。おうちに帰っても、誰もいないの」
「お父さんは?」
「いないよ。お母さんが帰ってくるまで、ひとりで待ってるの」
佐藤先生は言葉を失った。
美咲は続けた。
「お母さん、毎日歌ってるの。おうちに帰ってきても、知らない男の人と電話してることがあるの」
先生はすぐに学校の管理職に相談した。
そして、その日のうちに母親へ連絡することにした。
ところが、電話に出た母親は不機嫌そうだった。
「仕事が忙しいんです。子どもが学校で何か書いたからって、いちいち電話してこないでください」
翌日、母親は学校にやってきた。
開口一番、担任に言った。
「うちの子、何か問題でも起こしたんですか?」
佐藤先生は昨日の手紙を机に置いた。
母親はそれを見ると、ため息をついた。
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