「お父さんのねるところがなくなりました。」
小学2年生の息子が書いた国語の宿題を見て、私は思わず手を止めた。
問題にはこう書かれていた。
「『ところが』を使って、文を作りなさい。」
息子が書いた答えは、
「お父さんのねるところがなくなりました。」
その横には、先生の大きな赤いバツ印。
さらに、その下には赤字でこう書かれていた。
「『ところが』は、前の内容と反対のことをつなぐ言葉です。家の事情は書かなくてよいです。」
私はその文章を何度も読み返した。
確かに、国語の問題としては間違っている。
この問題で求められている「ところが」は、場所を表す「ところ」ではなく、前の内容と反対のことをつなぐ接続詞だからだ。
でも、私が気になったのは別のことだった。
なぜ息子は、わざわざ「お父さんの寝るところがなくなりました」と書いたのだろう。
実は、我が家には少し事情があった。
数か月前、私の母が体調を崩し、しばらく我が家で一緒に暮らすことになった。
部屋が足りなかったため、息子の部屋を母に使ってもらうことにした。
息子は私たち夫婦と一緒に寝るようになった。
そして、父親は息子にベッドを譲り、毎晩リビングのソファで寝るようになった。
息子は、そんな父親の姿を毎日見ていた。
ある夜、私が息子に聞いた。
「どうしてこの文章を書いたの?」
息子は少し考えてから答えた。
「だって、お父さん、毎日ソファで寝てるでしょ。お父さんの部屋もなくなっちゃったから」
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