2400円も払って貸切予約したドッグランに、知らない犬が3匹も走っていた。
しかも、受付の男性に確認すると、「今日は一緒に使ってもらってます」と言われた。
その瞬間、私は何を言われているのか理解できなかった。
「すみません。私、貸切で予約したんですけど」
「はい。でも、あちらの方たちも使っているので」
「えっ、それじゃ貸切じゃないですよね?」
男性は特に悪びれる様子もなく、柵の向こうにいる犬たちを指さした。
「大丈夫ですよ。向こうの犬は慣れてますから」
私は思わず、足元にいるハルを見た。
ハルは私の足の後ろに隠れ、しっぽを下げたまま動こうとしない。
この子がなぜ怖がっているのか、男性には分からないのだろう。
でも、私は知っている。
だからこそ、わざわざ貸切のドッグランを選んだのだ。
ハルは、私が引き取った保護犬だ。
家に迎えたばかりの頃は、散歩に出るだけでも大変だった。
知らない人が近づくと足を止め、ほかの犬が視界に入ると、私の後ろに隠れてしまう。
無理に歩かせようとすると、その場に踏ん張って動かなくなることもあった。
私は、そんなハルを無理に変えようとは思わなかった。
少しずつ外の世界に慣れてくれればいい。
安心できる場所が増えれば、それだけで十分だった。
毎日の散歩も、ハルの様子を見ながら続けてきた。
人通りが少ない道を選び、知らない犬が近づいてきたら距離を取る。
落ち着いて歩けた日は褒め、怖がった日は早めに帰る。
そんなことを繰り返しているうちに、ハルにも少しずつ変化が現れた。
以前なら玄関から出ることさえためらっていたのに、最近では自分から外へ出たがる日も増えていた。
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