「えっ、これって何の肉?」
しゃぶ葉で運ばれてきたトレーを見た瞬間、私は思わず箸を止めた。
黒いトレーには、薄くスライスされた肉が何枚も重ねられている。
一見すると、しゃぶしゃぶ用の普通の肉に見えた。
ところが、よく見ると妙な部分があった。
白い脂身の中に、茶色や黒っぽい塊のようなものが点々と混じっている。
「ねえ、ちょっとこれ見て」
私は向かいに座っていた友人に声をかけた。
「何?」
「この肉、なんか変じゃない?」
友人がトレーをのぞき込んだ。
「えっ、何これ?」
「分からない。こんな肉、見たことある?」
友人は首をかしげた。
「脂身が多いのは分かるけど、この黒いところは何だろうね」
私も同じことを考えていた。
しゃぶしゃぶは好きで、これまでにも何度か食べに行ったことがある。
薄切りの豚肉や牛肉を鍋に入れ、火が通ったところをポン酢やごまだれで食べる。
それが楽しみで、この日も店を訪れた。
でも、今回運ばれてきた肉は、見慣れているものとは少し違って見えた。
特に気になったのは、脂身の中にある濃い色の部分だった。
単なる赤身なのか。
血が残っているのか。
それとも、普段あまり見かけない部位なのか。
私には判断できなかった。
「これ、豚肉なのかな?」
「白い脂身が多いから、そう見えるけど」
「でも、こんな模様になることある?」
「分からない……」
私たちはしばらくトレーを見つめていた。
もちろん、肉には個体差がある。
同じ種類の肉でも、部位や切り方によって色や脂身の割合は変わる。
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