「10冊」と書いた息子の答案に赤いバツ。先生の一言に、私は思わず学校へ電話した。
「お母さん、僕の答え、本当に間違ってるの?」
小学2年生の息子が、ランドセルから1枚のプリントを取り出した。
そこには、赤いペンで大きなバツがついていた。
問題はこうだった。
「本が9冊あります。2冊を弟にあげて、3冊買いました。今、本は何冊ありますか?」
息子の答えは「10冊」。
しかし、先生はその答えにバツをつけ、下に赤字でこう書いていた。
「問題をよく読もう!」
私は最初、何か見落としているのかと思った。
9冊から2冊を弟にあげる。
残りは7冊。
そこに3冊買い足す。
合計10冊。
どう考えても10冊だ。
「先生は何て言ってたの?」
私が尋ねると、息子は少しうつむいた。
「みんなの前で、問題を最後まで読んでいないって言われた。僕、ちゃんと読んだのに……」
その言葉を聞いて、胸が痛くなった。
息子は算数が得意というわけではない。
それでも最近は、自分から宿題に取り組むようになっていた。
間違えた問題も、何度も計算し直していた。
だからこそ、今回のことを曖昧にしたくなかった。
翌日、私は答案用紙を持って学校へ向かった。
担任の先生に、まず問題の意図を尋ねた。
すると先生は、少し困った顔で答えた。
「この問題は、文章をよく読んで考えるためのものなんです。
数字だけを見て計算してはいけません」
私は静かに聞き返した。
「では、9冊から2冊を弟さんにあげて、さらに3冊買った場合、何冊になりますか?」
先生は「10冊です」と答えた。
私は答案用紙を机の上に置いた。
「息子も10冊と書いています。どこが間違いなのでしょうか?」
先生はもう一度、問題文を読み直した。
そして、しばらく黙り込んだ。
私は続けた。
「もし別の答えを求める問題なら、問題文にその条件を書くべきではありませんか?」
先生は答案用紙を見つめたまま、赤ペンを手に取った。
「確認させてください」
その日の夕方、学校から電話がかかってきた。
電話口の先生は、朝とは違う声だった。
「お母様、今回の採点について、こちらの確認不足がありました」
実は、先生が別の問題の採点基準と取り違えていたという。