「退去時に高額請求されたくなければ、私の言うことを守ってください」
引っ越してきたばかりの私に、大家さんが突然そう言い放った。
正直、最初から不安だった。
内見をせずに契約した私にも落ち度はある。
しかし、玄関を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、あちこちに貼られた大量の注意書きだった。
特に驚いたのが、リビングのドアに貼られた1枚の紙。
「ご入居後すぐに、フローリングの床にはカーペットやクッションマットを敷いてください」
理由は、階下への防音と、物を落とした際の傷防止らしい。
さらに、その下には小さな文字でこう書かれていた。
「退去時、入居者様の故意・過失による部分については、原状回復事項となり、実費でのご精算となります」
私は念のため、管理会社に確認した。
すると、大家さんが突然自宅まで来た。
「この紙に書いてあること、ちゃんと守ってくださいね」
「もし守らなかったら、退去するときに費用を請求しますから」
私は驚いた。
契約書には、カーペットを敷かなければならないという記載はない。
そもそも、床に何を敷くかまで大家さんに指示されるものなのだろうか。
それでも、入居したばかりで揉めたくなかった。
私はすぐに管理会社へ電話した。
「大家さんが突然自宅に来るのをやめてほしいんです」
「契約書に書かれていないことまで、退去費用を請求すると言われて不安です」
ところが、担当者の返答はあまりにもあっさりしていた。
「とりあえず、張り紙に書いてあることは守ってください」
それだけだった。
私は電話を切ったあと、しばらく動けなかった。
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