「好きなことで生きていく」――この願望は現代人の多くが抱く夢ですが、実現する人は少数です。お金がない、努力が続かない、才能が不足しているといった理由で諦める人が多い中、牧野富太郎という一人の天才は、徹底的にその道を突き進みました。2023年度前期の朝ドラ『らんまん』で描かれた彼の物語は、多くの人々に感動を与えました。今回は、その実在のモデルである牧野富太郎の生涯を振り返ります。

土佐・佐川に生まれた植物バカ

牧野富太郎は1862年、土佐・佐川村の商家に生まれました。家族は雑貨商と酒造業を営み、裕福であったものの、彼の幼少期は不幸に見舞われます。3歳で父を、5歳で母を、6歳で祖父を失い、祖母・浪子に育てられました。富太郎は明治5年（1872年）、寺子屋に通い始め、その後伊藤塾や佐川藩校・名教館に進学し、多岐にわたる学問に触れます。

植物学への情熱

富太郎は若い頃から文献に熱中し、特に植物学に対する興味が深まります。明治7年（1874年）、佐川に小学校が設立されるも、彼の才能を生かす場とはならず、明治9年（1876年）には退学してしまいます。この時期、富太郎の教育システムへの適応の難しさが見受けられ、彼は文部省発行の『博物図』などで楽しみを見出していました。

記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください