大学に合格した娘が、帰宅してすぐにお弁当箱を洗った。
たったそれだけのことなのに、私は台所で泣きそうになった。
実は、うちの娘は思春期に入ってから、ずっと反抗的だった。
「おかえり」と声をかけても返事はない。
夕食を作っても「いらない」の一言。
お弁当を持たせても、帰宅すれば玄関にバッグを放り投げ、洗い物は翌朝まで放置。
何度も注意した。
「食べたお弁当くらい、自分で洗ってね」
すると娘は決まってこう言った。
「今やろうと思ってた!いちいち言わないで!」
そのたびに私は言葉を飲み込んだ。
本当は、勉強で疲れていることも分かっていた。
受験が近づくにつれて、娘の表情から笑顔が消えていったから。
それでも、母親だって人間だ。
毎朝5時半に起きてお弁当を作り、仕事から帰って家事をしても、娘から返ってくるのは無愛想な態度ばかり。
「私の育て方が悪かったのかな」
夫に相談しても、
「高校生なんてそんなもんだろ。放っておけばいいよ」
と言われるだけ。
ある夜、私はとうとう娘に言ってしまった。
「お母さんだって、毎日当たり前にできるわけじゃないんだよ」
すると娘は不機嫌そうに、
「頼んでないし」
そう言って部屋に戻ってしまった。
その晩、私は台所で一人、涙を拭いた。
それから数か月。
娘は受験勉強に追われ、家族との会話もほとんどなくなった。
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