「この3つの基礎のうち、どれが一番安全だと思いますか?」
海沿いの断崖に建てられた3軒の住宅。
一見すると、どれも頑丈そうに見える。
しかし、構造エンジニアの佐藤は、この図を見た瞬間に眉をひそめた。
Aの住宅は、巨大な石を敷き詰めた上に建てられている。
Bの住宅は、何本もの鉄筋コンクリートの柱で建物を支えている。
そしてCの住宅は、地中に打ち込んだ杭と斜面方向のアンカーで固定されているように見える。
建設会社の会議室では、この3つの構造をめぐって意見が真っ二つに分かれていた。
「Aが一番安定しているだろう。石を大量に詰めれば、地盤も固まるはずだ」
営業部長は自信満々に言った。
「いや、Bのほうが合理的です。柱で建物を持ち上げれば、斜面の形状を大きく変えずに済みます」
若い設計担当者も譲らなかった。
最後に、現場責任者がCの図面を指さした。
「海沿いなら、杭とアンカーで固定するCが一番強い。
これで決まりでしょう」
全員が納得しかけた、そのときだった。
会議の隅で資料を確認していた佐藤が、静かに口を開いた。
「皆さん、1つ大切なことを忘れていませんか?」
部屋が静まり返った。
佐藤は3枚の図面を並べた。
「建物そのものを支えることと、斜面全体が崩れないようにすることは別問題です」
彼はまずAの図面を指した。
「大量の石を詰めれば安全になるとは限りません。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください