「えっ、そっちを買うの?同じ158円なのに?」
スーパーの青果売り場で、私は思わず足を止めた。
目の前には、長ねぎが2種類並んでいた。
左側は「1束158円」。
何本かまとまっていて、見た目にもお得そうだった。
一方、右側は「千葉県産・1本158円」。
たった1本なのに、左側と同じ値段だった。
普通に考えれば、左を買う方がお得に決まっている。
ところが、不思議なことに右側の長ねぎばかりが売れていく。
私はしばらく売り場を眺めていた。
そこへ、60代くらいの女性がやってきた。
女性は左側の長ねぎを一度手に取り、値札を確認した。
それから右側に目を移し、迷わず1本158円の方をカゴに入れた。
思わず私は尋ねてしまった。
「すみません。同じ158円なら、左の束の方がお得じゃないですか?」
女性は笑いながら答えた。
「そうね。でも、私はいつも右を買うのよ」
「どうしてですか?」
「うちは夫婦2人だけだから、たくさんあっても使い切れないの。それにね……」
女性は右側の長ねぎを手に取り、白い部分を指さした。
「こっちは太さがそろっていて、今日使いたい料理にちょうどいいのよ」
なるほど、量だけがお得の基準ではないらしい。
しかし、その日の午後、私はさらに意外な光景を目にした。
今度は料理好きだという男性が、右側の長ねぎを3本まとめてカゴに入れていた。
左側にはまだ束がたくさん残っている。
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