「そこ、座ります?」
新幹線の自由席で、私は思わず2人組の女性に声をかけた。
時刻は20時過ぎ。
連休最終日の新横浜発の新幹線は、ほぼ満席だった。
車内を見渡すと、3人掛けの座席のうち、真ん中だけが空いている場所を見つけた。
ところが、そこには誰も座っていなかった。
理由はすぐに分かった。
窓側と通路側に座っていた60代くらいの女性2人が、真ん中の席まで占領していたのだ。
テーブルは下ろされ、飲みかけの缶ビール、お弁当、買い物袋まで広げられている。
まるで自分たち専用の宴会スペースだった。
「最近の若い子って、本当に気が利かないわよね」
「そうそう。昔はもっと周りに気を遣ったものよ」
2人は周囲に聞こえるほど大きな声で笑っていた。
その間にも、何人かの乗客が空席を探して通路を歩いてきた。
しかし、真ん中の席を見ると、誰もが立ち止まる。
そして、結局そのまま別の車両へ移動してしまう。
座席は空いている。
それなのに、まるで誰も座ってはいけない場所のようになっていた。
私はその様子を見て、何とも言えない気持ちになった。
しばらくすると、小さな子どもを連れた母親が乗ってきた。
子どもは眠そうに母親の服を引っ張っている。
「ママ、座りたい……」
母親は空席を探し、あの真ん中の席に気づいた。
しかし、女性2人が荷物を広げているのを見ると、遠慮するように視線をそらした。
「もう少し探そうね」
そう言って、別の車両へ向かおうとした。
その瞬間、私は立ち上がった。
「すみません。そこ、座りますね」
女性2人が同時にこちらを見た。
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