「花壇を汚した犬です。飼い主は清掃代を払ってください」
マンションの掲示板に貼られた紙を見た瞬間、私は自分の目を疑った。
そこに写っていたのは、うちの愛犬さくらだった。
しかも、写真の下には私の部屋番号まで書かれている。
「ちょっと待って……何これ?」
さくらは9歳の白い柴犬だ。
毎朝、私と一緒に決まった散歩コースを歩いている。人懐っこい性格だけれど、外ではとてもおとなしい。
マンションの花壇には入らせないし、排せつ物を放置したことも一度もない。
それなのに、まるで私たちが迷惑行為をしたかのような貼り紙が、住民全員の目に触れる場所に掲示されていた。
「誰がこんなことを……」
そう思っていると、後ろから声をかけられた。
「それ、あんたの犬だろ?」
振り返ると、1階に住む森田さんが立っていた。
「この貼り紙、森田さんが?」
「そうだよ。昨日の昼、花壇に犬のふんがあったんだ」
「それで、どうしてうちの犬だと?」
「白い犬なんて、ほかに見ないからね」
私は一瞬、言葉を失った。
「それだけで決めつけたんですか?」
「写真もあるじゃないか」
「これは散歩している写真ですよね。花壇を汚しているところじゃありませんよ」
ところが、森田さんはまったく聞く耳を持たなかった。
「とにかく、ちゃんと掃除してもらわないと困るんだよ」
「昨日の昼なら、さくらは動物病院にいました」
私はスマホを取り出し、診察の領収書を見せようとした。
「ほら、日付も確認できます」
しかし森田さんは画面を見ることさえしない。
「診察が終わってから寄ったんじゃないの?」
「そもそも、花壇には入っていません」
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